空きっ腹に酒・田中幸輝

March 26, 2017

 

 

 

 

結成10周年を迎えた空きっ腹に酒が、6枚目のフルアルバム『粋る』をリリースします。この10年のことや、今作について、ボーカル・田中幸輝さんにインタビューしてきました。

10年目にして、今までとは少し違ったフレッシュな感覚、フレッシュなやり方で完成したのがこの『粋る』。まだまだアップデートされている最中の彼らの、今とこれからがますます楽しみになる1枚です。

 

Interview:Miyaco

 

 

 

 

―今年でバンド結成10周年ということですが、節目って意識しますか?

 

今はしてます。でも、10周年やろうぜって言う話になってから意識しだしたから9年目までは意識してなかったですね。そこで初めて「僕ら10年が近いんか」って思うようになったけど、バンドにとっての10年って何なんですかね(笑)。でもバンドが10年続くっていうのはめでたいことなんで、素直に嬉しいです。

 

―この10年で変わったこと、変わらないことって何がありますか?

 

表面の部分、見え方みたいなものは変わってると思います。表現方法とか、僕らが想像するリスナーの楽曲の受け取り方は、10年かけてだんだんキャッチーになってきたんかなって思いますね。それは表面の部分やけど、芯の部分…僕のメッセージ性とか歌詞を通して伝わったらいいなって思うことはあんまり変わってないのかもしれない。

 

―じゃあ、歌いたいことは自分の中に一貫しているのもがある?

 

怒りとか、負のイメージが強いものが多いかな。

 

―周囲からの見え方が変わっているということに対する戸惑いはありませんか?

 

うーん、どうなんやろう。

 

―こう伝わったらいいなと思うけど、そう見えてるのか。みたいな。

 

それは一生あるんだと思います、たぶん。自分たちの表現が100%そのまま伝わるとは思ってないし。バンドを始めたばかりの頃はその葛藤があって、「僕はこう伝えたいのになんでそう受け取るねん」っていう。でも、そこはこの10年で柔らかくなったかな。どう伝わっても自分がちゃんと分かっていればいいわって思う。だから、今はもどかしいというよりは、それも楽しみになってるかな。ツイッターとか見てたら、そう捉える?みたいな意見もあるけど(笑)、それはそれで自分の反骨精神を逆なでしてくれるので、そういうちぐはぐな部分も、結果として自分たちのためになってるなって思います。

 

―リスナーがそんな風に捻じれて受け止めてしまう気持ちは、私も分からなくもないですね。幸輝くんの歌詞ってとても考えさせるものだから、深読みしすぎてどっか行っちゃうっていうのはあるかもしれない(笑)。

 

あ、でもそれは狙ってる部分ではあるし、そこまで考えてくれるんやなって思うこともある。基本、マイノリティーというか、自分のことを歌ってるからそうなるのかな。ツイッターにすごくいいことを書いてくれてる人がいて、「幸輝君の歌詞は個人的なことを歌ってるけど、同じような経験がある人は自分のことのようにすごく刺さる」って書いてくれてて。生まれてから死ぬまで、大まかな流れはみんなだいたい一緒だと思うんですよ、働いて結婚して歳を取って、っていう。その中で経験する似たようなことを、どう受け止めるかの差だと思うから。僕と同じような考え方の人がおってもおかしくないし、そこが引っかかってくれたら嬉しいし、まったく異次元のように捉えてもらってもいいし。

 

―いろんな捉え方があることを、幸輝君自身も受け止められるようになったんですね。新しいアルバム『粋る』のことを少し教えてください。今回も作曲はメンバーみなさんがされたんですか?

 

そうですね、今回も3人がそれぞれ作ってます。“YES or NO”と“黒に赤”と“グル”がシンディーで、“生きるについて”はいのまたが作りました。ちょっと意外ですよね(笑)。それ以外は西田ですね。

 

―前回私がインタビューさせてもらったのが『人の気持ち』の時だったんですけど、その時は、シンディーさんが加入してから初めてこの4人で楽曲制作できた面があるという話をされていました。そこから1年経った今回は、意思疎通だったりコミュニケーションっていうのはどうだったんですか?

 

今回は、短い期間でがっつり集中して作ったっていうのもあって。なんて言ったらいいんかな…、意思疎通をせずに意思疎通をしたみたいなところがあるんですよ。とにかく曲を作って、歌詞書いて、録音してっていう作業をやってたから、細かく「この曲はこういう風にしよう」っていう話し合いはしてないんですよ、実は。だから、それぞれの持っているものが、全てそのまま入ったのかなっていう気はしてる。4人で話して計画を立てて作ったっていうよりは、それぞれが持っているものを1曲に詰め込んでいったから。なんか…意思疎通っていうよりも、無言で作業してる時間が多かった気がするな。頭がパーンと開けたみたいなところもあって、寝ずに一点見つめてるような時間もあって(笑)。その時はしんどかったけど、それが結構気持ちよかったんですよ。メンバーと作ってるなあっていう実感というか…空気で伝わってくるものがすごく多かった気がするし。

 

―言葉が要らない感じ?

 

うーん、言葉が要らないというか、言葉にしてしまったら崩壊しそうな感じがあった。他の3人は楽曲を作ってるときは話し合ってたかもしれんけど、僕が制作に入った段階ではそういうレベルではなかった。こうしてみたいって言うんじゃなく、作っては消して、作っては消して、っていうのを繰り返してた。不思議なんですけどね。

 

―今までにない感じだったんですね。

 

うん、初めての感じでしたね、あの感覚は。今までは、楽曲に対しての理解を深めてから作る感じだったと思うけど、今回は本当にどーんと出せるのもを出そうぜっていう感じで、本当に10年間で培ってきたものを出して作ったかも。この話は僕の視点でしかなくて、他のメンバーはわからないけど。

 

―10年で培ったものを。

 

僕らは結構特殊で、僕が楽曲制作に対して注文するのってノリの部分だけなんですよ。3人はもっと細かく話して詰めて音作りしてると思うんですけど。レコーディングの時って普通、オケを先に録って、それを聴いてから歌録りに入るじゃないですか。だけど、今回僕はそのオケを聴かずにレコーディングブースに入ったんですよ。歌録りの時に初めてヘッドフォンでオケを聴いて、その場のそのノリで歌って。

 

―それはすごいですね。ぎゅっと詰まっている感じもしますね。

 

そう、それが出したかったのもあるし、ここまで来たら最後までそれでやろうと思って。

 

―そうだったんですね。リード曲の“生きるについて”はポップな印象がありますが、どういうイメージで作っていったんですか?

 

その曲は、ポップでわかりやすいものを作ろうってメンバーが話してた気がするな。楽曲が完成したうえで歌詞を書き始めたんやけど、今までになくポップな感じやったから、どう歌ったらいいのかわからなくて、一番最後まで歌詞が出て来なかったんです。この音に対してどう言葉でアプローチしたらいいのか、今までの空きっ腹に酒には見えへん部分やったから。だから、楽曲制作してるっていう意識を一回捨てて、ほんまに自分の現状とか将来とか、とにかく生きていくことについて素直に思ってることを善悪関係なく詰め込んでみようと思って。だから今まで6枚アルバムを出してる中で1番素直な曲かな。全然かっこつけられへんかったっていうか(笑)、自分の言いたいことに対して見え張られへんかったし、一番リアルな歌かなって。

 

―“御乱心”は、敢えて聞かなくてもいいかもしれないんですけど(笑)、この曲で歌ってることを教えてもらえますか?

 

すみません(笑)。まぁでも、今までよりは優しい気持ちのような気はするんですけどね。何とかダンスっていう曲めっちゃ多いじゃないですか。これも最初は御乱心ダンスにしようかと思ってたんですけど(笑)。でも、そのダンスって何なんやろう、とか。このMVではお客さんが右手を振るだけっていうのをやってるんですけど、あれで足一歩も動かさずに「踊ったわー」って言うやつ何なんやろうと思ったりか(笑)。ライブハウスではみんないろいろご乱心状態なんですよ。そんなバンドを10年続けてる僕らもご乱心やし。「何なんやろうこれ?」っていうのを歌っていて。特定の誰かをディスってるわけじゃなくて、飲みの席で冗談言ってる感じですね。手を振るだけやけどそれもやっぱり楽しいよなとか、嘘みたいな一体感やけどそれもありやなとか、全部認めたうえで冗談を言ってるんです(笑)。

 

―そうなんですね。私はこれを聴いたときにサウンドオブミュージックを思い出しました。

 

あぁ、そうですね。でもサウンドオブミュージックは洒落にならんぐらい怒ってましたからね(笑)。今回は冗談です。

 

―わかりました(笑)。それから、“雨”はアルバムの中でも緩急の付く存在だなと思うんですが、これは西田さんが作られたんですね。

 

そうですね。

 

―実は、これはシンディーさんが作ったのかなって想像してたんです。

 

うち、メンバーが何を作ってくるかわかんないんですよね。前のアルバム(『しあわせ』)でいのまたが“ゼロ”っていう曲を作ったんですけど、「西田の楽曲を超えてやろうと思って作った」って言ってたんです。だから、メンバーがメンバーのことをパクッてるんですよね(笑)。それは面白いなと思うし、僕も西田がああいう曲を持ってくるとは思ってなかった。あーでもないこーでもないって言いながら作り上げていくから、最初のきっかけがそいつだったっていうだけで最終的には全員の意識が入ってるとは思うけど。でも、西田がああいう曲を作ろうという意識になるのはちょっと意外だったかも。

 

―前にインタビューさせてもらった時、シンディーさんが曲を書かれて新しい風も吹いたけど、それもひっくるめて空きっ腹に酒らしさになってるっていう話をされてたんですけど。お互いがお互いのアイデアとか意識を引き出し合ってるのかなって、今話を聴いてて思いました。

 

あぁ、それはあるかも。僕の話で言うと、メンバーの意見を聞くようになってますね。ラップのアプローチに関してもメンバーに教えてもらったことも結構あるし、「ここは言葉を詰め込まないほうがいい」とか「これだと幸輝のいいところ消してるで」とか言われたりするんで。お互いの良さをお互いでを気付かせ合えたかなって思いますね。それは今度ちゃんと話してみようって言ってて(笑)。恥ずかしいけど、10年目やしお互いのいいところ言ってみようやって(笑)。

 

―それはちょっと恥ずかしいですけど(笑)、新しい発見があるかもしれないですね。

 

あるかもしれないですよね(笑)。中学生みたいにわざわざ待ち合わせして遊びに行ったろかな(笑)。

 

―私はこの歌詞も、素直さというか、幸輝君のひねくれてない感じが出てるように感じたんですけど。

 

いわゆる恋愛の歌ですけど、妄想なのかな?自分が昔経験した失恋のことなんやろうけど、それを一生引きずりますからね(笑)。十何年引きずってきて、それが膨らみすぎて嘘みたいな話になったのを、そのまま言葉にしたんです。そんなにきれいな別れでもなかったし雨も降ってなかったと思うけど、美化しますよね。素直というよりは、妄想なのかな。

 

―なるほど。それから今回の作品は、いろんな楽器の音が入ってますよね。

 

これまで4人だけのバンドサウンドにこだわってきたけど、“生きるについて”を作ってる時にポップなものをっていう意識もあったし、今回は曲として面白いものにしてみたいなっていう意識が働いて、いろいろやってみようと思ったのもある。ホーンの音はオレスカバンドが演奏してくれてるんです。周りにそうやって助けてくれる人もいたから。4人の音に限界を感じたわけではないけど、面白いものが作れるならバンドサウンドにこだわらないでいい音楽を作ろうっていう方向に意識が向いたのかな、今回は。

 

―バンドサウンドにこだわっていた理由とか、それがいろいろやってみてもいいんじゃないかと思うようになったきっかけはありますか?

 

うーん、飽きじゃないですかね?飽きというか…バンドサウンドである程度やったから、次のステップをってなった時に、試してみたいことが増えたんだと思うんですよ。ここにこういう音が入ったら面白いんじゃない?じゃあやってみようや、って。そういう単純な理由やと思うんですけど。

 

―例えば10年前だったらありえなかった?

 

10年前やったら、僕がめっちゃ嫌がってたかも。「トランペットの音入れたい」って言われたら、それはバンドじゃないって言ってたかもしれないですね。空きっ腹に酒じゃない人が空きっ腹に酒の楽曲に関わるのに違和感を感じてた気がする。でもね、そんなことはないんですよ(笑)。それはそれでかっこいい考え方やと思うけど、それを貫くことが空きっ腹に酒なのかって言われたらそうじゃないかなって。いいものを作ってライブでどう表現するかを僕らが考えるだけなんで。いいものが作れるならどんなこともやりたいなって思いますね。

 

―何をやっても空きっ腹に酒になるっていう自信がついたのかなっていう気もします。

 

自信がついたのと…ひとつは諦めもあるかもしれないです。

 

―諦め?

 

「空きっ腹に酒になっちゃうよ、どうしても~」っていう諦め(笑)。本人たちに「空きっ腹に酒っぽさって何?」って聞いたら、たくさんありすぎて本人たちも言葉で明確に掴めてないと思うんですよ。掴めてないからこそ、それをこの短期間でガッと出せたと思うんですよね。掴めてたらそれを意識しちゃって、そこに集中して似たような曲が揃ってしまうかもしれないと思うけど、意識してないから振り幅は広いけど空きっ腹に酒っぽく落とし込めたのかなって。だから意識しないのがある意味コツのような気もしてて。

 

―頭でっかちにならないで作れた、と。

 

そうそう。それができたんですね。こういう作品になるんやって思えて楽しかったですね。さっきも言ったけど、僕はオケを聴かずにレコーディングしたんで、そこで初めてホーンが入ったりシンセが入ってる音を聴いたんですよ。「おぉ、すげぇ!」ってなった、その感動はすごく楽しかったです。

 

―アルバムタイトルの『粋る』に込められてる意味は?

 

もともとは“生きるについて”から取ろうと思ってたんですけど、ちょっとひねりたくなるのが僕のくせで(笑)。結果として、粋なアルバムになったなと思ったから。粋だねって言われるのって、かっこいいって言われるより嬉しいじゃないですか。だから粋って言う言葉を、このアルバムを作ってから好きになりました。

 

―そのタイトルに相応しいアルバムになってるっていう感じもあるんですね。ここまで10年やってこられて、これから先はどうしたいかっていう想いはありますか?

 

ここまでやってきた中で、10年目にどうなっていたいかっていうのを考えたことがないバンドなんです。この先どうしていきたいかっていうよりも、その場その場で目の前のことを全力でやってきたのがこの10年で。だから、あんまり先を想像したくないというか。「10年目こんな感じになりました、20年目どんな感じになるでしょう。僕らもわかりません、お楽しみに」っていう感じで、20年目を迎えた時に「こんな感じになったんか、面白いな」ていうバンドになりたいなって僕は思ってて。バンド内で話をすることはあると思うけど、意識しないっていうのは、楽しくバンドをやる僕らなりの秘訣というか。その先を想像して、間違ってる・間違ってないっていう答えが出るよりは、これはこれで楽しかったなって思える10年だったから。

 

―ある意味、全部正解っていうか。

 

そう。それは逃げっていう風に捉えられるかもしれんけど、それって実は難しいことで。この4人やから破城せずにやれてるんかなって思うから、これからも目の前のことを4人で仲良くやれたらいいかなって思います。

 

―ある意味、これまでと変わらずにっていうことですかね。

 

そうですね。やり方は変わらずに、バンドはどう変わっていくかを楽しみたいですね。

 

 

2017.4.5.on sale!

¥2,700(tax in)/AOME-0016

『粋る』​

 1 どーも
 2 fashion
 3 生きるについて
 4 御乱心
 5 雨
 6 キョとムー
 7 YES or NO
 8 FLOW
 9 黒に赤
 10 グル
 11 心の唄

 

 

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